建築業界で働くのに必要な才能
どんな職業でも同じですが、括りは1つでもタイプは様々、得意分野や得意技がひとりひとり違うのです。それぞれが持つ才能を活かして仕事に取り組んでいる、だから「この才能が必要」なんてことは無いのです。
ただし、「有ったら有利!!」という才能はあります、業種によってどんな才能があったら有利に働くのか、政治家に有利な才能、タレントに有利な才能、スポーツ選手に有利な才能、起業家に有利な才能、芸術家に有利な才能、それぞれあるのです。
建築家の才能
一般的なイメージで、建築家といえばデザイン力、立体構造の創造力、そういうものが発揮されていると思えますが、実際は、建築家といっても、一般住宅の建築士もいれば、ビルや公共建造物の建築士もいる、学校や神社仏閣、駅や空港、等々、様々なジャンルの建造物があり、その建造物の種類だけ建築家もいるわけです。その中でも名が通っている建築家は、大きな事業に関わっている人が多いのです。
では様々な建築家に共通して「あると嬉しい」才能って何でしょう?
1つは、やはり、感性、創造性とかデザイン性を生み出す才能です。これが優れていれば、面白いもの、美しいもの、画期的なもの、普通の人が考えつかない建造物が造れそうです。
2つ目は、保守力です。安心、安全、安定・・建造物には人の生活を守る役目が有るのですから、確実に安定したものを作れなければなりません。建築業に携わる人には必要な才能です。
日本を代表する建築家を例に視てみます。
安藤忠雄さん
安藤さんは、表参道ヒルズや国内外の美術館や記念館、世界の宗教施設や都市空間設計されています。現在、国立新美術館で記念展を開催している安藤さん
http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/
安藤さんの才能は、
芸術的感性が非常に大きい、建築家ではなくても、他の芸術の世界でも才能を発揮出来る人です。また芸術的感性に負けないくらい知力(知識・企画)が大きい。これは理論に裏付けられた技術で、計算などはこの才能がモノを言いますし、学者的な才能にもなります。そしてこの才能が宗教や哲学、伝統文化と言ったものに通じます。
この2つの才能、「芸術性」と「知力」は精神世界を表現するタイプの才能なので、安藤さんは建築に精神性を組み込んでいるのだろうと推察します。
槇文彦さん
東京体育館や幕張メッセ、テレビ朝日本社ビル、学校や図書館、病院などの公共施設の建築が有名、最近では東京オリンピックの国立競技場建築見直しに一石を投じた建築界の大御所的存在です。
http://www.maki-and-associates.co.jp/
槇さんの才能は、
表現力と芸術的感性が全体の76%、典型的な芸術家タイプです。それも一般大衆向けの伝達能力なので、個性というより大衆性が強い感性だと言えます。前出の安藤さんはどちらかと言うと大衆向きではなく「個」の感性なんです。また、槇さんは建築家にはありがたい「保守力(努力・協調)」というものも強く、才能として有ると嬉しい・・と書いた「感性」と「保守」で構成されている才能の持ち主です。
黒川紀章さん
京セラビルやSONYビルなどの企業のビルから、美術館、博物館などはもちろん、国内外の空港や駅、あるいは競技場やスタジアム、あるいは大阪万博やつくば万博のテーマ館、遊園地などを建築。どちらかというと生活空間というより、活動的な場所の建造物が有名です。晩年は政治や思想家としても活動されていました。
黒川さんの才能は、
圧倒的に攻撃才能(攻撃、戦略)が強く、アクティブな活動を主とした才能です。それが結果的に競技場や遊技場、移動手段である駅や空港の建築に才能が発揮されているようです。また、黒川さんは保守の才能でもある「協調力」が高く、これは政治力でもあるので、政治の世界に身を投じることは才能に合っていたということです。
才能以外でこの3人に共通するのは、3人ともに名誉運が強く、宿命自体が特殊だということです。俗に言う「変わり者」といわれるような、一般では理解出来ない感覚を持った人達なのです。でもその感覚が芸術的才能として活かされるのが特徴です。
建築業としては「保守力」が必要
前述した3人は「建築家」、言ってみればデザイナーです。でも建築業としてはデザイナーだけが仕事ではありません。現場での作業をする人、営業やコーディネートをする人、材料の調達や管理、様々な部署があります。なので、どの部門、どの部署でどんな仕事をするかによって才能の活かし方は違って来ます。極論で言えば材料の調達や管理に芸術性は必要無いわけです。
では、建築業界で働くのに必要な才能、有ればありがたい才能は何なのか?
それはやはり「保守才能」でしょう。
誰かを守ろうと言う才能です。建築に携わる人には、その活躍に有利に働く才能が「保守力」なんです。その保守力は、努力・継続のエネルギーであり、職人気質にもなります。あるいはコミュニケーション能力でもあり、共同作業、ネットワーク力でもあるのです。
建築の仕事は、様々な能力を持った人や専門の人が協力し合っていく仕事です。個々の力を結集し、みんなで世の人々の生活を守って行く、それが建築業の本質なのです。